大判例

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東京高等裁判所 昭和61年(く)28号 決定

請求人 水戸弁護士会

〔抄 録〕

関係証拠を調査して検討するのに、警察官たる被疑者が高村英則巡査とともに住居侵入被疑事件の被疑者犬丸茂の身柄を検察庁へ送致する手続の職務に従事中、駐車中の護送車内において犬丸が被疑者及び高村巡査に対し暴行を加えて逃亡することを企て、被疑者の左手第二指にかみ付いて、その先端爪部をかみ切るなどして暴れたため、被疑者は高村巡査とともに犬丸を制圧してその逃亡を防ごうとしたものの、既に左手を負傷し、かつ車内が狭あいであったことなどから、逮捕術の活用や特殊警棒の使用等が極めて困難であったうえ、当時精神に異常を来していた犬丸が、両前手錠等を施されていたにもかかわらず、被疑者ら二名の警察官の力では制圧できない程異常に強い力と兇暴性を発揮して暴れ続けたため、第三者の応援を求めるべく護送車のクラクションを鳴らしたが、応援を得られず、やむなくけん銃で威かく射撃することを決意し、犬丸に対し「撃つぞ」と警告したうえ、車両の床目掛けて弾丸を一発発射したが、犬丸がこれにひるむ態度を全く見せず、逃亡すべく前部助手席に移動しようとしたので、犬丸の逃亡を防ぐにはけん銃を撃つ以外に手段がないと判断し、犬丸の右足首を狙って弾丸を一発発射したが、犬丸が何ら態度を変えずに更に前部助手席の方へ進んだので、今度は左足首を狙って弾丸を一発発射したこと、概ね以上のような本件けん銃発射行為に至る経過、状況等について原決定が詳細に認定説示するところは、本件関係証拠によって優にこれを肯認することができるのであって、請求人が当審において提出した本件に関する新聞記事写は右認定を左右するものではなく、右のような事実関係によると、被疑者の本件けん銃発射行為は警察官職務執行法七条本文、同条但書一号に該当し、刑法三五条の法令によりなした行為として違法性が阻却されるとした原決定の認定判断は相当であってこれを縷々論難する所論は採用することができない。

(山本 渡邉 近江)

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